天津に、強制連行・強制労働の記念館があると知ったのは、つい最近
のことだった。 ちなみに、強制連行とは… 1942年11月、「華人労務者内地移入ニ関スル件」の閣議決定により、 1943年4月~1945年5月の期間中、中国から日本へ38,935人の 中国人が強制連行された。 日本に強制連行された中国人の90%以上は、北京・天津・河北・山東 等、華北地方の出身者だった。 そして、連行され日本へと向かう船は、ほとんど天津の塘沽港から出港 したのだそうである。 連行された中国人達は、第2次世界大戦の間、鉱山・土木・港湾等、 全国35社135ヶ所の事業所で、強制労働を強いられた。 まるで奴隷のように働かされた結果、約4万人連行された中国人のうち、 6,830人が死亡したそうである。 日本敗戦後、1950年代~1960年代にかけて、中国人死亡者の遺骨・ 遺灰は関係者の協力により、天津に再び、戻ってきた。 天津市は、水上公園内の天津市烈士陵園に、在日殉難烈士・労工 記念館(簡体字で“在日殉难烈士・劳工纪念馆”)を作り、強制連行で 亡くなった方々の遺骨・遺灰を納めた。 しかし、建物が古くなってきたため、鉄東路に新たに天津市烈士陵園を 作り、在日殉難烈士・労工記念館も同時に移転した。 新しい記念館は、2006年8月にオープン。 開館記念式典には、強制連行の生存者や遺族、日本の友好団体ら 約300人が出席。 強制連行を記録する運動に携わった元衆院議長の土井たか子も式典 に参加し、代表献花を行なったそうである。 1月26日の土曜日、とても天気が良かったので、バスとタクシーを乗り 継いで、在日殉難烈士・労工記念館のある天津市烈士陵園に行って みた。 [天津市烈士陵園] 建物に近付いてみると、全てのドアが閉まっていた。 管理棟らしき建物に行き、見学したい旨を伝えると、開けてくれると言う。 記念館の責任者らしき人物が来るのを、しばらく待った。 責任者が来たので、また見学したい旨を伝えると、身分証明書の提示を 求められた。 なかなかチェックが厳しい。 それにしても、パスポートのコピーを持っていて良かった…(^^;) はじめに、三つある建物のうち中央にある革命烈士記念館を見学させて もらった。 革命烈士とは、中国の革命のために犠牲となった人のこと。 かつての革命戦役で亡くなった戦士達だけでなく、国のため、国民のため に命を捧げた一般市民に対しても、烈士の称号が与えられるようである。 [革命烈士記念館] 次に、在日殉難烈士・労工記念館を見学。 展示資料には、日本人見学者のための日本語説明も付記されていた。 [在日殉難烈士・労工記念館] (強制連行者を運んだ信濃丸。劣悪環境の貨物船で船上死もあった。) (強制連行者が働かされた全国の事業所マップ。) 1階と2階を結ぶ階段には、船に備えてあるような救命浮き輪が飾られ ていた。 連行される船の船室を象ったのだろうか? 強制連行の事件のうち、有名な花岡事件(花岡鉱山での強制労働に 耐えられず、連行者が一斉蜂起した事件。事件後も花岡では強制 労働や虐待が続き、連行者986人のうち419人が死亡。)関係の資料 も多く展示されていた。 花岡事件は、その後、中国人生存者らが当時の使用者である鹿島組を 相手取り、損害賠償を求めた。 これは、中国人が日本企業を訴えた初の戦後補償裁判である。 花岡事件訴訟は、2000年11月、強制連行された986人全員を対象に した和解が成立し、和解基金が設立された。 しかし、まだまだ解決されていない訴訟もある。 強制連行・強制労働の生存者や、その遺族達は、未だに辛い思いをして いるのである。 展示室を見学し終えた後、納骨室へも入室させてもらった。 小さめのロッカーに、ずらりと並ぶ遺骨や遺灰。 一人一人の命の重みを感じずにはいられなかった。 祭壇があったので、犠牲者の方達に対して、ご冥福をお祈りした。 記念館の外に出ると、記念館の脇には、犠牲者の名が彫られた碑が あった。 6830人もの名前が刻まれているそうである。 ここでも、手を合わせた。 [犠牲者名が彫られた碑] 中国人の強制連行・強制労働については、日本の雑誌の特集で読んだ ことがあり、知っているつもりでいたが、天津が深く関わっていたことは 知らなかった…。 戦争の歴史を知れば知るほど、日本人にとっては辛い過去が浮き彫りに なってくる…。 しかし、今後そのような悲しい歴史を作らないために、たとえ辛くても、 戦争の歴史を知ること・学ぶことを避けてはいけないのだろう。
by yuzitj
| 2008-02-01 06:00
| 天津
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