本「阿Q正伝・狂人日記 他十二篇(岩波文庫)」 著者:魯迅 訳者:竹内好 出版:岩波書店 発行:2006.5 魯迅(1881-1936)は、浙江省紹興府生まれの小説家。 魯迅が生きた時代の中国は、1840年のアヘン戦争から列強に侵略 され、国力は衰えていく一方…という時代であった。 魯迅は、そんな中国を嘆き、儒教を基とした封建的な社会への批判を、 小説の形で表した。 生まれ故郷の紹興を主な舞台として、普段の人々の生活を描いた短編 小説が多い。 私は今まで魯迅の短編を幾つか読んだことはあったが、中国の歴史を 詳しく知らなかったため、ただ『なんて暗くて、やりきれない小説なんだ ろう…』と思っていただけであった。 しかし、この本を読んで、魯迅の小説への見方が変わった。 この本には、とても詳しい訳註が付いているので、魯迅が込めた深い 思いが理解しやすかったのである。 この本は、5月18日の日記にも書いたように、北京の茶館“茶家傅”でも 読んでいた本。 明・清時代の骨董家具に囲まれた“茶家傅”で、魯迅の小説を読んで いると、スッと話の中に入り込むことが出来た。 でも、時々、窓から漏れ聞こえてくる“后海公園”で遊ぶ人たちの笑い声 によって、現実に引き戻された。 魯迅の生きた激動の時代、その後も文革の時代など、中国は苦しい時代 が長らく続いたが、今やっと都市部の人々は幸せそうに暮らしている。 しかし、都市郊外から農村にかけては、まだまだ幸せとは程遠い生活を 強いられている人々がいるという現実がある。 そのような格差の中、社会を嘆く者によって、また新しい文学が生まれて くるのだろう。
by yuzitj
| 2007-05-29 06:00
| 本
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